「ランボー 最後の戦場」
タイ北部の山の中で孤独な日々を送っているジョン・ランボーのもとに、少数民族を支援するキリスト教支援団体の女性・サラが彼の前に現れる。彼らは軍事独裁政権による迫害が続く隣国ミャンマーの窮状を憂い、医療品を届けようとしていた。その情熱に打たれ、頼みを受けて目的地の村まで送り届けるランボー。しかし本拠地に戻った彼に届いたのは、サラたちが軍に拉致されたとの報せ。救出のために雇われた最新装備に身を固めた傭兵部隊5人に、手製のナイフと、弓矢を手にした一人の戦士が加わる。戦場への帰還を決意したランボーだった…!
★★
・原題はJohn Rambo. ロッキーの完結編も主人公のフルネームが原題だったから、スタローンの頭の中では、この2つのシリーズは双子のような存在であって、共に完結させたいということなのかもしれない。
・だが、ロッキーの方は一作目から30年近くたって、見事に原点に回帰し、着地できたのに対し、ランボーの方は、どうだったのだろうか?
・今回はビルマを舞台にしているが、かといって政治的なメッセージは希薄だった。迫害されてるキリスト教信者たちの部族を弾圧する敵を単身で倒す、とそれだけ。一作目の、ポスト・ベトナム戦争の時代に人々の鬱屈を晴らし、勇気付けようとするような心は感じられない。
・結局、残酷に殺しまくるシーンが大半を占める。
・いや、結局、ランボーとはそれだけの存在だったのだろう。あるいは、国際政治自体がランボーをこういうふうに変えてしまったということか。
・殺戮場面で、血しぶきが飛ぶのだが、これらは全部CGで描き加えたものと思われる。妙に立体感がなく、色も変だった。わざと違和感を持たせてるのだとしたら、おもしろい。
(2008/6/24)
「奇跡のシンフォニー」
両親が必ず迎えに来ると信じながら養護施設で暮らしていた、孤児のエヴァン。鋭い音感を持つ彼は、ある日、不思議な音に導かれるようにNYのマンハッタンへと向かう。そこで“ウィザード”と名乗る男にギターを習い、ストリートミュージシャンとして音楽の才能を開花させていく。一方結ばれぬまま別離したエヴァンの母ライラと父ルイスも、それぞれの想いを胸にマンハッタンを目指し……。
★★★★
・邦題の「奇跡の…」という表現がまさにこの映画を表わしている。
・主人公の音楽的才能、出会う人々、そして物語の進行を促すエピソードと、ミラクルの連続だ。
・だから、序盤で、これは奇跡の物語であると割り切ってみることができるかどうかが鍵となる。
・オリバーツイストとか母を訪ねて三千里とかの、肉親探しに放浪する少年のストーリーラインは、ストレートですがすがしく、妙にこねくり回されていないところに好感を持った。
・むしろ、ストーリーより、音楽の力の賛美に力点を置いているだ。劇場のような大音響で見るのが正しいと思われる。
(2008/6/23)
「西の魔女が死んだ」
goo映画から
中学生になったばかりのまいは学校へ行くのが嫌になり、ママの提案でおばあちゃんのもとでひと夏を過ごすことになる。魔女の血筋を引くというおばあちゃんの暮らしは自給自足。野菜やハーブを育て、昔ながらの知恵を活かしながらの生活は、まいにとって新鮮に感じられた。課された“魔女修行”は、早寝早起き、食事をしっかり摂り規則正しい生活をするというもの。そんな暮らしは、やがてまいの心にも変化を起こさせるのだった…。
★★★
・上品な印象の映画。これはおばあちゃん役のサチ・パーカーの丁寧な言葉遣いによるのが大きい。あの、片言具合がうまく効いている。
・前半はジブリのような田舎風景の描写と、そこで祖母と二人で暮らすことになった登校拒否の中学生との、つかずはなれずの生活といった感じで、ありきたりな印象が濃い。いや、でも、そのありきたりなところは、かえって、安心して見てられるというところか?
・中盤、ニワトリが惨殺され、近くに住む男が捨てたエロ本が映し出されてから、極度に潔癖すぎる、扱いづらい中学生女子が大人へと変わるというテーマがうすうす見えてくる。
・だが、映画は、そこらたりのところをあんまり深追いしない。
・終盤にきて、おばあちゃんの死と、言うべきことを言えなかった後悔と、その救いが表わされるが、ここもわりと蛋白
・蛋白と上品さが売りなのか。何か、マトを絞りきれていない印象が残った。惜しい感じ。
・画像は、おばあちゃんが、バラの木の下にはにんにくを植えると良い、虫がつかないから、と説明しているところ。
(2008/6/21)
「DIVE!!」
エリート選手の富士谷要一に憧れて飛び込みを始めた坂井知季は要一と同じミズキダイビングクラブに通っている。ところが、クラブは赤字続きで存続の危機に。再建を任された新コーチ・麻木夏陽子の使命はクラブからオリンピック代表選手を出すこと。手始めに津軽の野生児と異名をとる沖津飛沫を新たに招き、さらに今まで誰にも期待されることのなかった知季が「ダイヤモンドの瞳」の持ち主であることを見抜くのだった。
★★★★
・美少年3人がビキニパンツで、というところで違った見方をされるかもしれない映画
・ポスターもそんなところを強調している感じ
・だから、美少年萌えの女子(あるいは男子)向けのアイドル映画かと思って見に行ったが、予想以上に、しっかりした構成の青春映画となっていた。
・監督は、個人的に名作としている「虹の女神」の熊澤尚人。
・コミックが原作。主人公は「バッテリー」で走る姿が運動選手していた林遺都。今回もスポーツしてます。
・ただ、彼女との関係とか弟とのエピソードとかが邪魔だったかと。
(2008/6/20)
「JUNO / ジュノ」
16歳のジュノは、バンド仲間のポーリーと興味本位でしたたった一回のセックスで妊娠してしまう。高校生が子供を育てられるわけがなく、ジュノは親友リアに「中絶するつもり」と報告するが、中絶反対運動中の同級生に「赤ちゃんにはもう爪も生えているわよ」と言われ、産む決心をする。フリーペーパーで子供を欲しがっている理想的な若夫婦を見つけ、里子に出す契約を交わしたジュノは、大きなお腹を抱えて通学する生活を始める。
★★★★
・英語が聞き取れねえー! 速い! 意味不明の表現多し!
・例えば、ジュノが妊娠のことを友人に電話で伝えると、その友人が Oh my God! Oh shit! Phuket Thailand! と言って驚くのだが、どうしてタイのプーケットが出てくるのだ?
・…と思って調べてみたら、phuketとFuck it の音が似ているからとのこと。Oh my God! Oh shit! Fuck it! と言いかけて、とっさに別の表現にしたと。そんなの分からないよ!
・恐らく、この類の表現が山ほど出てきて、弾丸のようにセリフの撃ちあいが行われているに違いない。だから、字幕では魅力の100分の1も分からないと思う。吹き替えにしても、よほどセンスのある日本語セリフが書ける人が訳さないとムリ。
・それでも、深刻な題材を明るく、軽快に流し、前向きに運ぶストーリーラインや、音楽のセンスの良さはセリフが分からなくても充分伝わり、良くできた小品だと思う。
ジュノのスクリプト
(2008/6/18)
「ザ・マジックアワー」
港町・守加護でクラブ「赤い靴」の支配人を任されている備後は、ギャングのボス・手塩の情婦・マリに手を出したのがバレて大ピンチ。5日以内に幻の殺し屋・デラ冨樫を探し出して連れて来なければ命はないと脅される。が、デラの居場所に皆目見当もつかない備後は替え玉を仕立てる苦肉の策に出る。そこで白羽の矢が立ったのが売れない俳優・村田大樹。主演映画を撮りたいと村田を騙し守加護へ連れて来るのだった。
★★
・限られた場所・シチュエーションで多数の人が入り乱れドタバタコメディを繰り広げるという三谷幸喜のパターンは、この人の作品の個性なのであり、売りなのだから、まったく問題ない。
・ただ、作品を重ねるたびに、キャラクターや題材の掘り込みの浅さ、笑いのわざとらしさ、あて書きが明瞭な脚本が、気になって仕方なくなってくる。分かったよ、もういいよ、という気持ちになってくる。
・次回作があっても、また、こんな感じの映画だろうと、あらかた想像がついてしまう。このパターンで他作と比べて抜きんでた傑作とか作れるのだろうか。
・テレビ等の宣伝がうるさかったのも、そのような気持ちに拍車をかけていた。ファンとの馴れ合いだけじゃないかと。
・その中で佐藤浩市は、笑いの部分を独り占めして輝いていました。あと市川昆監督も出てました。
(2008/6/13)
「築地魚河岸三代目」
都内の総合商社で働くエリートサラリーマン、赤木旬太郎(大沢たかお)は30代半ばで人事課長に抜てきされ、プライベートでは恋人の明日香(田中麗奈)との結婚を意識するようになる。そんな公私共に絶好調の旬太郎に転機が訪れた。社内の大規模なリストラを指揮することになったのだ。リストラ対象者のリストには、かつて世話になった上司の名前も。さらに旬太郎は、夜明けの町でゴム長靴を履き自転車をこぐ明日香を目撃する。
★★★
・「男はつらいよ」、「釣りバカ日誌」に続く松竹のプログラムピクチャとしてシリーズ化が予定されているとのこと。
・ということで、通常1000円、サービスデイなら600円くらいなら見てよいと思う。そういう映画だと思えば全然問題なしだと思う。
・ストーリや画面や劇判が類型的ではあるが、逆に安心できると言えなくもない。
・築地の移転問題には全然触れられていないが、それで良いのか? シリーズ化した後に山場として持ってくるつもりなのか?
・あまりサカナが美味しそうに見えないのが辛いところ
(2008/06/12)
「休暇」
刑務官の平井は、職場で当たり障りのない付き合いを続け、40歳を越えた今も独身だった。ある日、姉の紹介でシングルマザーの美香と見合いをする。仲人に乗せられ、会ったその場で、二人の結婚は決まったような雰囲気に。しかし、平井は、この結婚にささやかな希望を持っていた。処刑の際、下に落ちて来た体を支える役をやれば、1週間の休暇が取れる。美香を新婚旅行に連れて行きたい平井は、「支え役」を自ら志願するのだった…。
★★★★
・ずしりと重い
・小林薫の地味な中年の刑務官、西嶋秀俊の死刑囚と、ほとんど反則技と言ってよい演技・存在感。特に西島の声はずるい。
・また大塚寧々の薄幸な連れ子持ちの女と大杉漣の理解ある上司も良い。
・連れ子との交流と死刑囚との交流が対比されている構成も見ていて落ち着く
(2008/06/09)
「シューテム・アップ」
深夜、NYの裏通り。謎の男に追われる妊婦を見たスミスは、いきがかりから彼女を助けた。しかしそこに男の仲間らしき者たちが乱入し、事態は銃撃戦に発展。そんな中妊婦から赤ちゃんを取り上げたスミスは、流れ弾で死んだ母親の代わりに子どもを抱えて逃走。すると男たちは、今度は子どもを奪うためにスミスに襲い掛かった。子どもが狙われる理由がわからないまま、スミスは娼婦ドンナのもとへと逃げ込むが……。
★★★★★
バカ映画最高!
・最大凶器のにんじん
・銃撃の合間の出産
・赤ん坊を連れて教会に逃げたと思いきや、その手のコスプレ売春宿
・マカロニウエスタン風を理解しているクライブ・オーエン、ジアマッティもうまい、モニカ・ベルッチも色気ムンムン
・妙に過激な道徳心がある主人公
・赤子を乗せた遊具をピストルで回転
・エッチしながらの銃撃戦は男子なら誰でも夢見る
・ロープで降りながらのマシンガン乱射
・さらにはスカイダイブしながらの銃撃。その後の死体の散乱具合
・なぜ戦車に隠すという発想がでる
・素手で発射かよ
・手を傷めた後でもやっつけられるのは、荒野の用心棒のアイデア?
「銃が妻より良いわけを知ってるか?」「銃にはサイレンサーがあるのだよ」
Do you know why a gun is better than a wife? There's silencer on a gun.
「幸せになるための27のドレス」
アウトドア・ブランドの社長秘書として働くジェーンは、ブライド・メイド(花嫁付添い人)に生き甲斐を感じ、毎日、誰かの結婚式の準備に奔走していた。そんな彼女に、地元新聞で結婚式の取材記事を書いているケビンが目をつける。結婚記事の仕事に飽き飽きしていたケビンは、ジェーンのブライド・メイド人生を記事にし、それを手柄に部署から抜け出そうとしたのだ。しかし、取材を続けるうちにジェーンに惹かれるようになり…。
★★
「プラダを着た悪魔」と同じスタッフとの宣伝。「プラダを着た悪魔」を見ていないから、僕には何の効果もない宣伝だったが。ラブコメであろうとしている努力は認めるし、それなりの構成もしているけれど、どうにもうまく回っていかない映画だった。序盤の結婚式の掛け持ちのところからして、なんか、あわただしい印象だけで、笑いも楽しさも大変さも伝わらない。最終的に結ばれる男性との出会いもインパクトが薄い。そしてわがままな妹が登場してから、リズムはさらに悪くなっていく。じれったくはらはらさせられるなら良いのだが、中途半端にイライラを募らせていく。確かに、エルトン・ジョンの「ベニー・アンド・ザ・ジェッツ」でノリノリになりラブシーンにつながるところは良かったのだが、そこまでで、妹への仕返しは悪辣で、そのインパクトが強烈過ぎて、見ている者の頭の中での修復が完全にできないままにハッピーエンドを見せられて、置いてけぼりにされた感じだった。